太陽の風・月の空 16

(執筆日:2009年07月28日)

「俺たち状況を把握できていないんだ。説明してくれないかな」
 各務くんがオルドに向かって言った。私は各務くんの隣で、うんうんとうなずく。
 オルドは気難しい顔つきで私たち二人を眺めると、疲れたようなため息をついた。
「厄介な……」
「あなたが強引に連れてきたんじゃない。厄介なってなんなのよ」
 反射的に文句を言ってしまった。ジロリとオルドににらまれる。美形が怒った顔をすると、怖さが倍増するからすごくいやだ。私は慌てて各務くんの背中へと隠れた。
 オルドはしばらく考えるような顔つきをした後、私たちのほうへと一歩近づいてきた。
「説明しなければならないことが多すぎて、どこから説明するべきか……。まず、先程までおまえたちがいた世界は、もうない」
「…………」
 オルドの言葉が夢物語のようにしか聞こえなくて、私も各務くんも言葉が出なかった。
 は? なに言ってんの? 冗談なんか言ってる場合じゃないでしょ?
 そんな言葉しか脳裏に出てこなかった。真面目な顔をしてオルドが冗談を言っているようにしか、感じられなかった。
 今、聞きたいのは、そんなことじゃなくて、現状の説明。本当のことを教えてよ。私たちが知りたいのは、真実なんだから。
 オルドは各務くんを見た。
「ライト、おまえはそうなることを知っていたはずだ。呪術師の呪いで世界が破壊される前に、封印の鍵を我らの元に回収する任務を担っていたのだから」
「え……?」
 各務くんが驚いたような声をあげた。
 私も思わず各務くんを見つめてしまった。
「各務くん、どういうこと?」
「いや、俺にもよく……」
 戸惑い、混乱するような顔で各務くんが困っている。
 私はオルドをにらみつけた。
「各務くん知らないみたいじゃない。変な言いがかりをつけてこないでよ!」
 私が言い返すと、オルドは呆れたように肩をすくめた。

つづく
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