(執筆日:2009年08月16日)
私はオルドに向かって問いかけた。
「どうしてあの町は塀が高いの? どうして入口で警備してる人は、あんな全身に纏うような鎧を着ているの?」
「治安が悪いからだ」
オルドの返事は簡潔だった。
「塀が高いのは不法に侵入する者を防ぐためだ。入口が厳重なのは、許可のない者が入れないようにするためだ」
「そんなにこの辺りは物騒なの……?」
防犯グッズ、全部向こう側に置いてきちゃったのに。
持っていた時には必要なくて、手放してから必要になるなんて。
「本当なら、おまえたちのその服装は怪しまれる。だが、あの町には懇意にしている権力者がいるから、私はかろうじて信用されている身だ。だから安心しろ」
今はオルドの言葉を信じるしかなかった。
「確かに、日本の高校の制服なんて、見たことないだろうからなー」
各務くんがノンキなことを言う。
「宿に着いたら、着替える必要あるってこと?」
各務くんがオルドへと聞いた。オルドは私たちのほうを見ながら、深くうなずいた。
「その服装では目立ちすぎるからな。服の調達はたいして時間もかからない。それとアオイ」
急に私の名前を呼ばれてびっくりした。自己紹介した覚え、ないんだけど?
「治安が悪いということは、女の身でウロウロすると危険だと言うことだ。ライトと同じような服に身を包んでもらう」
「……って、男装しろってこと?」
「その通りだ」
「……えぇぇぇぇ……?」
私は心底から嫌そうな声を出した。隣で各務くんがクスクスと笑う。
「大丈夫じゃないか? きっとものすごく似合うと思うよ。もともと色気なんてないんだし」
「失礼ね!」
どうして各務くんて、こういうムカつくことばっかり言うんだろう。腹立つなー。
つづく
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