(執筆日:2008年07月31日)
津王茂良と再会したのは、高校二年生になったばかりの四月の頭。
そいつはクラスのムードメーカー的な存在で、いつでも明るくて、いつでも元気で、いつでもエネルギーに溢れてた。
だけど僕だけ知っていた。
津王があと半年で死ぬ運命だということを。
津王は何から何まで僕とは正反対だ。
勉強は得意だけど、クラスには溶け込めずにいる僕。
勉強は苦手だけど、クラスのみんなに好かれている津王。
僕はそんな津王を遠目で眺める程度で、一定の距離を保ったままでいた。
仲良くなりたくなかった。
半年後に死ぬ奴とは。
僕はいつでも一人でいた。
いや、一人でいようとしていた。
怖かったんだ。
誰かと仲良くなるのが。
そう、いつ死ぬのかわかっている相手と親しくなるなんて。
怖くてたまらないから近づきたくない。
「なぁ、多嶋」
授業の合間の休み時間、無意味に次の授業の教科書をパラパラしてたら、いきなり声をかけられた。
驚いて振り返ると、津王がいた。
すごく近くに顔があって、かなりびっくりした。
津王はそんなことには全く構っていない素振りで、口を開いた。
「午後の数学の宿題ってやった?」
「やったけど……」
「ノート貸して。俺、忘れちゃってさあ」
「いいけど……」
「やったあっ。多嶋、サンキューねっ」
あからさまに嬉しそうな顔をして、渡したノートを持って行く。僕はびっくりした心臓を持て余し、左胸の上に手のひらを置いた。
自分の席へと戻った津王は、僕の貸したノートを開き、真剣な顔で書き写し始めた。
つづく
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