淫らな伯爵と灼熱の蜜夜 30

(執筆日:2016年07月19日)

 リアナの足の間で、デュレンが遠慮なく腰を揺らしてくる。悲しくなっても身体の奥では快感がにじみ、呼吸は荒くなり、意識は朦朧とする。ふたりの想いが一致していなくても、身体を繋げることはできてしまうのだ。愛とはなんだろう。セックスとはなんだろう。リアナはよくわからなくなってきた。
 初めては好きな人で。そう思ってきた。出会ったばかりの男に強引に奪われ、当たり前のように俺の物として扱われる。そこにリアナの気持ちや意思は含まれていない。彼が抱きたければいつでも抱くし、リアナが拒んでもそれは許されない。
 リアナの瞳にたちまち涙の粒が浮かび、溢れてこめかみを伝った。気づいたデュレンが一瞬戸惑ったような表情になる。
「どうした。背中が痛いのか?」
 見当違いのことを言われ、リアナはつい吹き出した。泣き笑うリアナをどう思ったのか、デュレンは彼女の身体を起こし、姿勢を変える。座るデュレンの上に乗せられ、きつく抱き締められた。豊満な胸がデュレンの鍛えられた胸板に押しつけられる。
 下からぐんっと突き上げられた。
「あうっ……」
 リアナの背が弓なりに反らされる。
「これなら痛くないだろう」
 大理石の床は確かに痛かったが、そのせいで泣いたわけではない。だが、勘違いしているデュレンがおかしくて、リアナの心が和んだのも間違いなかった。
 下から腰を叩きつけられるたびに、熟れた蜜壷から濡れた音が響く。熱い粘膜が収縮し、デュレンの硬い肉を締めつけて離さなかった。襞をかき混ぜられると気持ちよさに気が遠くなる。
 すべてを心得た男の動きは、リアナを狂わせていく。だんだん理性がどこにあるのかわからなくなり、自分がしていることへの抵抗も薄れていく。
 つかまる場所を探し、いつしかデュレンの背中に腕を回していた。しがみつくリアナをどう思ったのか、デュレンはますます強く抱きしめてきて、腰の動きを速めてきた。
「あぁっん、んっ、ふぁあっ」
 リアナはデュレンの耳元で鳴き喘いだ。急にぐいっと離され、噛みつくように口づけられる。互いの舌が熱く絡み、唾液を混ぜながら、さらに深く口づける。
 今ここには本能しかなかった。リアナは快感を追うように腰を揺らした。規則的なようで不規則なリズムが、身体の奥まで響く。
「ひゃ、あぁっあ……、だめ、だめ……もうっ……」
 リアナは自分でも何を言っているのかわからないまま、がくがくと揺れた。デュレンを締めつけている隘路がひくひくと収縮し、ふいな絶頂に狂いそうになる。
 デュレンの背中にしがみついた。
「ひゃああああああん……っ」
 ほぼ同時にデュレンが、二度目の吐精をリアナの体内に叩きつけた。
 リアナはがくりと力尽きたように崩れ落ち、デュレンがそっと抱き止めた。
「身体のほうが遥かに素直だな。いい加減逆らわずに、俺の妻になれ」
 耳元で囁かれたが、リアナはいやいやとかすかに首を振った。デュレンが呆れたようにため息をつく。
「まあいいだろう。いずれ俺の子を宿せば、気持ちも変わるだろう」
 なだめたいのか慰めたいのか、デュレンがリアナの髪をよしよしと撫でた。

つづく