(初出:note 執筆日:2017年06月05日)
五月とは思えないほどの暑さでぐったりしていると、部屋の床のシミがみるみる広がり穴になるのが見えた。
穴からはにょきにょきと植物の芽が伸びて、みるみる茎を伸ばして、やがて花が咲いた。
花はボーリングの玉ぐらいの大きさで、色は濃いピンクだった。あっという間に育った花はじきに枯れて、ひまわりの種かと思うほどの量の種を落としていった。
床は種だらけになった。
迷惑だなと思いながらホウキとチリトリを取り出し、種を全部チリトリに追いやり、ゴミ袋へと捨ててギュッと縛った。
そのまま放置していたのがいけなかったのだろう。
種たちから芽が出てきて、ゴミ袋を突き破って天井まで伸びた。茎はそのまま天井を突き破り、空高くまで伸びていった。
植物が育ったゴミ袋はずっしりと重く、持ち上げるのも大変だったので結局そのまま置いておいた。もはや手がつけられなくなったのだ。
仕方がないので部屋で本を読んだ。現実逃避とも言える。
天井を突き破った茎がだんだん枯れてきた。大量の種がバラバラと落ちてくるのではないかと身構えたが、特に何も落ちてはこなかった。
翌朝、部屋を見てみると天井に穴が開いているだけで、植物は跡形もなくなっていた。
悪い夢でも見たのだろう。そう自分に言い聞かせるしかなかった。
業者を呼んで天井の穴を塞いでもらう。余計な出費だった。頭にくる。
ほっと一息ついてコーヒーを飲んでいると、床のシミがみるみる広がって穴になった。
その穴から植物の芽が出てきたので、慌てて摘み取る。豆を粉にしてコーヒーを作った際に出るコーヒーかすを、穴に敷き詰めた。
植物はもう出てこなかった。
ようやく落ち着けると思い、着替えて外に出た。
買い物をして家に帰る。
ドアを開けると室内は植物の茎が密集していた。足の踏み場すらない。
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