(初出:note 執筆日:2015年11月16日)
水たまりに手を入れたら、そのまま吸い込まれた。
水の中をどこまでもどこまでも落ち続け、気づいたら水の底だった。
海とは違って何もなかった。ただ水と底があるだけだ。
立ち上がり、水の底の上を歩いた。ザシャザシャと土の感触。
果てしなかった。どこまで歩いても景色が変わらない。
水の上はどこだ。いつになったら着く。
疲れ果てて崩れ落ちた。
腹が減り、地面の土をつかんだ。水を含んだ土は柔らかく、手のひらで握るだけで粉々になった。
口に運んでみると、甘かった。どうやらこれは食べられる土らしい。
空腹を満たすために一心不乱で食べ続けた。
やがて腹も膨れ、歩く気力が湧いてきた。
歩いても歩いても水の上には出ない。
空を見上げた。小さな泡を含んだ水がゆらりと揺れる。
遠い向こうに水面はあるらしい。
泳げばいいのだと思いついたが、不思議と浮き上がらなかった。
諦めて再び歩き続ける。ゴールは遠かった。
やがて力尽きて意識をなくす。
再び目が覚めた時は、ベッドの中だった。
なんてひどい夢だ。
そう思いながら起き上がると、そこはまだ水の中だった。
部屋全体が水に埋め尽くされている。
きっとこれも夢なのだ。そう思い、再びベッドに横たわって眠りについた。
END
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