青空の瞬間 1

(執筆日:2008年07月31日)

 その能力は僕が物心ついた頃にはすでにあった。

 まだ五歳の頃、母親にそのことを告げたら、あからさまに変な子扱いをされた。
 同じ話を祖母に言ったら、そのことは誰にも言っちゃいけないよと諭された。
 それから僕は、この能力のことは誰にも言っていない。

 僕には人の寿命が見える。
 何歳まで生きるのか。
 何月何日に死ぬのか。
 一分一秒曇ることなく。
 すべてが見えてしまう。

 僕はその能力に対して客観的でいられたから、つらくなったり苦しんだりはしなかった。
 まだ身近な人が誰も死んでないからかもしれない。

 その能力は衰えることなく、僕の中に根付いていた。
 見たくなくても見えてしまう、
 他人の死。
 目を反らすことは許されない。
 僕はすべてを見なくてはいけない。
 包み隠さず。
 逃げることのできない僕の宿命。

 そんな僕も十六歳になった。
 高校二年生に進級し、クラス替えが行なわれ、新しいクラスメートたちと新しい一年を過ごすことになる。

 なんとなく新しいクラスメートたちを眺めた僕は、愕然とした。
 いた。
 一人だけ。
 半年後に死ぬ奴が。

 そいつの名前は津王茂良(つおう・しげよし)と言って、ずっと昔、幼稚園の頃に出会ったことがある。
 友達と呼べるほど親しくなることもなく、その後、同じクラスになることもなく今に至る。
 たぶん僕は幼稚園の頃も知ってたはずだ。
 津王が何歳まで生きるのか。
 でもその頃はまだ遠い未来のことで、僕は気にも留めなかったんだと思う。

 津王はすごく楽しそうな顔で、近くの席に座ってる男友達と喋っていた。
 健康的で元気で、殺しても死ななさそうなぐらい生命力に溢れてた。

つづく
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